マイナス金利の導入 〜日本再生の根本原理
輝の会は不良債権問題等、日本及び世界の金融経済問題を解決しました。
金利の決定方法
 金利を「貨幣の価値の変化率」として定義しました。では、この変化率は何に基づいて決定されるべきなのでしょうか。
 従来の金融・経済理論では、金利はプラスに限定されていました。金利がプラスであるということは、貨幣の価値が常に増加することを意味します。


 「貨幣には価値の保存機能がある。」
 「金を借りたら全額返すのが当然である。利息も当然支払うべきである。」


 という常識的な考え方が、金利をプラスに限定する理由だと思われます。しかし、本当にこの考え方は正しいのでしょうか。ここでは簡単な経済取引例を説明して、金利の決定方法について検討を加えたいと思います。
 尚、経済取引以前には、貨幣は存在しません。経済取引と共に貨幣は発生します。また、貨幣は債権ということになります。何かを購入する権利、ということです。債権と債務は必ず同時に同額発生します。権利(債権)と義務(債務)は必ずセットで成立するのです。


 経済取引を行う3人の人間を想定します。この3人をA、B、Cと名付けます。AとBの間で取引を行い、Cは銀行の役割を果たすものとします。


 Aが商品を生産し、これをBに売却するとします。価格を100円とします。この時、Cは100円の貨幣を発生させて、これをBに貸付けます。Bはこの貨幣でAから商品の購入を行います。Aは100円を獲得することになるので、この貨幣を銀行Cに預けることにします。Bには100円の借金が残ることになります。貨幣の価値は経済取引時に発生するため、これらの貨幣の流れは全て同時に発生するものと考えます。
 次いでBが商品を生産し、これをAに売却することにします。価格を110円とします。先程の100円の取引から今回の110円の取引までの期間の預金利息、貸出利息を共に10円とします。Aは預金100円と利息10円をCから引出します。Bは借金100円と利息10円をCに返済します。110円の取引とAの預金引出、Bの借入返済を同時に行えば、この110円の取引が成立します。
 この2取引において、生みだされた経済的な価値は100円から110円に増加しています。これは経済取引規模の拡大を意味しています。このように経済取引により生み出される価値の変化割合のことを、経済成長率と呼びます。この2取引の期間を1年間とすれば、経済成長率は(110−100)/ 100 = 0.1 (年率10%)となります。
 この間の貸出利息は10円でしたから、金利に換算すれば10%ということになります。このように、金利と経済成長率が完全に一致するとき、借入と返済が矛盾なく行われることになります。以上から、


 「金利と経済成長率は、完全に一致しなければならない」


 ということになります。そうしないと、経済取引は成立しないのです。


 通常、銀行の預金と貸金では、金利が異なります。貸金の金利を預金よりも高くすることにより、銀行は収益を確保しているのです。
 先程の110円の取引を、120円の取引に変更して考えてみましょう。預金利息を10円とし、貸出利息を20円とします。そうすると、この取引はAの資金不足により成立しないことになります。Aは110円しか保有していないからです。
 この場合、120円の取引の内、110円分をAが購入し、残りの10円分をCが購入すると考えます。そうすれば、取引は矛盾なく成立することになります。
 この場合、経済成長率は20%ということになります。貸出金利も20%となりますから、貸出金利と経済成長率は完全に一致することになります。一方、Aの預金金利は10%ですから、これと経済成長率には整合性がないことになります。以上から、


 「貸出金利と経済成長率は完全に一致しなければならない」


 という結論が得られたことになります。


 以上は極めて単純な取引例ですが、経済の本質を理解するためには、このように取引に無関係の資金を一切排除して考える必要があるのです。そうすると、経済の本質を理解することが極めて容易になるのです。


 現実の経済活動では、多数の経済主体が取引を行っているため、全体像を把握するのが困難になります。また、生産物にも大別して「中間生産物」「最終生産物」の2種類があるため、考え方が複雑になります。
 「中間生産物」と「最終生産物」は、自動車の生産で例えれば、「自動車の部品」と「自動車」ということになります。部品はあくまで自動車を生産するための中間的な生産物なので、「中間生産物」と呼ばれているのです。
 最終生産物の価格には中間生産物の価格が含まれているため、最終生産物の取引のみを集計すれば、全体の取引量が把握できることになります。ですから、単純化のために最終生産物の取引のみを考慮することにします。(中間生産物を考慮すると、付加価値額を多重計上してしまうのです)
 日々発生する取引の総額を把握します。すると、これが日々発生する貨幣の総額になります。日々の取引ですから、当然総額には増減があります。すると、この取引総額の変化率が、日々の金利ということになるのです。同様に考えれば、1年間の平均金利は、1年間の取引総額の変化率で、ほぼ代用できることが分かります(いつ、いくら発生するかにより、誤差が生じます)。
 国内で一定期間内に生産された最終生産物の価値の総額を、国内総生産(GDP)と言います。GDPは経済指標として定期的に発表されています。また、GDPの変化率のことを経済成長率と言います。(取引例でも経済成長率という言葉を使いましたが、GDPの変化率が一般的な意味です)


 以上の考察から、


 「経済指標としての経済成長率と貸出金利は本来一致するべきである」


 ということが、容易に理解できるのではないでしょうか。


 尚、経済成長率には金額そのものを意味する名目経済成長率と物価変動率の調整を加えた実質経済成長率の2種類の概念がありますが、本書で経済成長率と呼ぶのは、物価変動を考慮しない名目経済成長率のことになります。
(GDPには全ての経済取引が含まれているわけではないので、本書の経済成長率という言葉と完全には一致しません。本書の経済成長率という言葉に意味の近い経済指標が、名目経済成長率だということです)


 従来の経済理論で、金利の本質を定義できなかったのは、経済取引の行われていない貨幣に経済的な価値を認めているためです。現金取引を主にした現在の経済体制では、必要以上に多くの貨幣が流通しています。これら全てに経済的な価値を認め、金利を適用するため、金利の本質が見えにくくなっているのです。貨幣の価値は経済取引時にのみ発生するものであり、それ以外の貨幣など本来必要ないのです。現金主義を廃止して、貨幣にIT技術を採用すれば、不要な貨幣など必要なくなるため、経済取引を理論的に矛盾なく運用することも可能となるでしょう。そうすれば、現在のように経済運営に四苦八苦することはなくなるのではないでしょうか。


 金利と経済成長率が一致するということは、経済取引規模が図のように曲線状に変化するとき、金利が下の曲線のように変化することを意味します。 経済成長がプラスの時には金利はプラスになります。しかし、経済成長がマイナスのときには、当然金利もマイナスになります。
 ある時間 における経済規模を X(t)、金利を r(t)  とすれば、


r(t) = (100/X) × (dX/dt) (%)  


 という計算式で、金利 r(t) を定義することができます。 dX/dt は経済規模の変化額を意味します。これを経済規模 X で割ることにより、経済規模の変化率を算出することができるのです。さらに100倍してパーセント単位に変換しています。


 以上の考察から、従来の経済・金融理論には致命的な欠陥があることがお分かりいただけるのではないでしょうか。プラス金利という前提には何ら理論的な根拠が存在しないのです。金利には当然マイナスも存在するのです。経済規模が縮小することは、貨幣の総額の減少を意味します。この減少は、マイナス金利を適用することにより実現することができるのです。


 従来の経済理論でも、好景気の時には金利を上げ、不景気の時には金利を下げるべきだとの結論が出されていました。
 本書の説明とは別の考察から結論が導かれていたわけですが、この考え方よりも、本書の考え方のほうが単純で分かり易いのではないでしょうか。要するに、国の基準金利は経済成長率そのものなのです。これより金利が高ければ、債務者に過大な負担がかかり、逆ならば債権者(預金者)に負担がかかるのです。よろしいでしょうか。


 マイナス金利の導入は、時価主義の導入と考えれば分かり易いのではないでしょうか。株式の資産額は、購入価格ではなく、時価(市場で取引されている価格)で評価します。市場価格が上昇すれば資産は増加し、価格が下落すれば資産は減少するのです。購入時の価格は関係ありません。
 貨幣の総額を決めるのは、市場経済の規模そのものということになります。経済取引の発生と共に、貨幣は発生します。規模が拡大すれば、貨幣は増大します。逆に規模が縮小すれば、貨幣は減少するのです。経済取引が無くなれば、貨幣の価値も無くなります。
 以上の考察から、経済規模が縮小したら、貨幣の総額も当然減少させるべきなのです。貨幣総額変動のパラメータが金利です。ですから、経済規模縮小時には、金利をマイナスにして、貨幣の総額を減少させなけばならないのです。
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